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「よしよし、はやく大きくなるのですよ」
昔々、日本が小さな国に分かれていた頃、ある王国の
第八夫人が男の子を産みました。
「 その子を捨てるのだ!」
「 えぇー!? お、王さま、なぜでございますか?」
「 昔から、5月5日に生まれた男の子は、身長が戸の高さ
まで達すると、親を害する、と言われておるからじゃ!」
「 そ、そんな・・・・・」
― 1年後 ―
「 第八夫人さま、いくら隠れて育てていても、宮殿の中にいては
いずれ王さまにバレてしまいますぞ 」
「 ご家老どの、お願いです。もう少しだけ見逃してくださいませ 」
― 5年後 ―
「 神さま、王さまに見つからずに何とか5年間育てる
ことができました。
この子が王さまの子供として認められるように力を
お貸しくださいませ 」
― 数日後 ―
「 おや? 宮中では見かけない顔だな。何者だ?」
「 王さま、わたくしの遠縁の娘でございます。
実は、礼儀作法を学ばせようと思いまして・・・・。
王さま、どうぞ目をかけてやってくださいませ 」
「 王さま、ミズキと申します。どうぞ、お見知りおきを・・・・・」
「 ウムッ! 良い心がけじゃ。しっかりはげむのじゃぞ」
― さらに数年後 ―
「 王さま、た、たいへんですーっ!
隣国のクロハラ王が会談を申し入れてきましたーっ!」
「 王さま、会談には誰か代理を出席させては・・・。
相手はあの陰謀家のクロハラ王ですぞ 」
「 判っておる。しかし、わが息子どもは昼間から酒を呑んであの体たらくじゃ。」
「 お、王さま・・・・・」
「 ここは余が自ら行くしかあるまい 」
「 お、王さま・・・・・ 」
「 王さま、お願いがございます。
クロハラ王との会談に、ミズキをお連れくださいませ」
「 な、何じゃと!? 」
「 第八夫人さま、良いところに気が付かれました。ミズキは7歳
ですが、なかなか利発な子。 王さま、ぜひそうしなさいませ 」
「 ウム、そうするか・・・・・ 」
家老と第八夫人が強く勧めるので、王さまはミズキを 会談の場
に連れて行くことにしました。
― 会談場 ―
「 タケワカ王よ、よう参られた。まずは一献 」
先に会談場のテーブルに附いていたクロハラ王は
タケワカ王に酒を勧めました。
( あっ! 王さま、それは・・・・ )
その様子を見ていたミズキは、あることに気が付きました。
「 クロハラ王さま、お待ちください。王と王が乾杯する時には、
まず最初に、天神地祇に捧げるのが礼儀のはずです。」
ミズキは、酒の入った徳利を取ると、天地の神々に捧げる礼
の儀式を行いました。
ミズキがお酒を床に注ぐと、紫色の煙が立ち上りました。
「 えぇーっ !? 床が溶けた!」
「 こ、これは、毒酒ではないか・・・・ 」
陰謀がバレたクロハラ王はあわてて逃げ出しました。
「 ミズキ、そなたのおかげで助かった。
そなたが男なら、そして、わが息子であったならのう・・・・・ 」
「王さま、7年前に5月5日に生まれた男の子を『捨てよ!』、
と言ったことをお忘れですか?」
ミズキがあの時の赤ん坊であることを悟ったタケワカ王は自らの
不明を詫びるとともに、ミズキを息子と認め、世継ぎとしました。
神社にお参りしたミズキは、そこで女装を解き、正式に太子と
なりました。
それ以来、ミズキの出世にあやかろうと、7歳になった男の子
が女装をしてお参りに行く風習が始まりました。
その後、3歳の男の子と女の子、5歳の男の子、7歳になった女
の子が健やかな成長を願ってお参りに行く風習に変わったとい
うことです。
― おしまい ―