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「 ま、待ってください。そ、それを持っていかれては・・・・ 」
「 エーイ、うるさい!」
「 おまえたち農民は、王さまのために年貢を納めていればいいのだ! 」
「 われわれから年貢を取り上げるだけで、何もしてくれない
王さまなど、いらない! みんな、立ち上がれーっ! 」
ウワァー! ワー!
「 ワー! た、助けてくれー!」
昔々、東方にあった王国の王さまが、農民たちに重い年貢を課し、贅
沢な暮らしをしていました。
ある不作の年、農民たちは革命を起こして、王さまを追放したのです。
この戦いを指導したジャックが新しいリーダーになりました。
「 われわれを苦しめた王さまはいなくなった。
これからは自分のために一生懸命働き、地上に天国を作るのだ! 」
革命、バンザーイ!
ジャック首領、バンザーイ!
「では、まずこの革命を記念したシンボルの像を作ろう!」
オーッ!
― 数年後 ―
「 首領さま、首領さま、ジャック首領さま、
シンボル像を作る予算が足りません」
「 な、なにー!? もっと寄付を集めろー!」
「 首領さまのシンボル像のために寄付をもらっていくぞ 」
「 ウワァーン! どこが、地上の天国だよー !」
「 同士諸君のおかげでついにシンボル像が完成したぞ 」
「 首領さま、おめでとうございます 」
「 ジャック首領さま、おめでとうございます 」
「 革命記念宮殿、 革命記念道路、 革命記念公園、 革命記念トイレ、
革命記念ゴミ箱,、 豪華な施設で国中を飾り立てるのだ」
「 ウッ! む、胸が・・・ 」
「 しゅ、首領さま、いかがしましたか? 」
「 ジャ、ジャック首領さま! 」
心臓発作を起こしたジャックは、あっけなく死んでしまいました。
ジャックの魂は天国に向かって昇っていきます。
― 天 国 ―
「 か、神さま、大変です! あのジャックがやって来ます!」
「 な、なにー !? 」
「 ジャックが来る? 多くの農民を苦しめたあのジャックがか!」
「 た、たいへんだ―っ! あのジャックがくるぞーっ!」
「 キャー! ど、どうしましょう?」
天国にやって来たジャックに神さまが言いました。
「 これ、ジャック。ここはおまえの来るところではない。
おまえは地上に天国をつくったではないか 」
天国に入れなかったジャックは、しかたなく地獄へ向かいました。
― 地 獄 ―
「 だ、大魔王さま、大変です。あのジャックがこちらに向かっています 」
「 大魔王さま、あんな奴が地獄に来たら、我々の休み時間がなくなっ
てしまいます。何とかしてください 」
地獄の門に立った大魔王は、ジャックの魂に言いました。
「 おい、ジャックよ。 ここはおまえの来るところじゃない。
おまえは、地上に地獄をつくったではないか 」
「 そ、そんな・・・・。 天国にも入れず、地獄にも入れず、
いったい私はどこに行けばよいのでしょうか?」
「 ジャックよ。この提灯をやろう。
おまえの魂が安らげる場所は、おまえ自身で探すんだな 」
古代ケルトの人々の間では、10月31日が一年の終わりに当たり、
ハロウィンのお祭りが行われました。
ハロウィンの日、死者の魂が家族のところにやって来たリ、精霊や
魔女が出てくると言われています。
そして、ハロウィンの夜には、大魔王からもらった提灯をかかげて
さまよい歩くジャックの姿が、今でも時々目撃されているそうです。
― おしまい ―