白紙のヘッダー
トップ
どんぐり履歴
リンク
どんぐり劇場
どんぐり劇場
どんぐり劇場
隻腕のメジャーリーガー
マネキン
紅葉狩り
七五三
門松
ハロウィン
歳の市
敬老の日
肝試し
マイボスマイヒーロー
あまがえる
鏡もち
人形の日
お盆
ひな人形
おしん物語
マネキン
ガッシャーン!
「 あーっ! や、やっちゃった 」
「 また、キミかね! まったく失敗ばかりじゃないか!
いいか、まだキミは試用期間なんだ。
このままじゃ正式採用はできんぞ」
「 ス、スミマセン・・・・」
「 あ〜あ! またダメか・・・・・」
幸せな人であふれたにぎやかな街並みの中を、ひとりの若者が
トボトボ歩いていました。
若者は、あるショーウィンドーの前で足を止めました。
ショーウィンドーの中には、流行のファッションで着飾った一体の
マネキン人形が入っていました。
「いいよな〜、マネキンは。 立ってるだけで仕事になるんだもんな」
『 元気を出しなさい。 一生懸命がんばって
いれば、きっと良いことがありますよ 』
「 エェッ !?」
若者はマネキンが自分に話しかけた気がしました。
(・・・・そうだ、一度や二度の失敗がなんだ! 負けてたまるか・・・・)
不思議なマネキンに話しかけられた若者は、めげずに一生懸命
働きました。
そして、一日の仕事が終わると必ずあのマネキンのところに会いに
行きました。
マネキンの声は、もう聞こえませんでしたが、若者にはいつもニッコリ
と微笑みを返してくれたように見えたのです。
そのうち、仕事にも慣れ、自然に肩の力が抜けるようになると、
仕事の辛さも次第に薄れていきました。
若者が仕事に慣れていくにつれて、不思議なマネキンも若者に
微笑みを返すことはなくなりました。
それでも、若者は、仕事が終わると必ずマネキンの所へ行き、
毎日眺めるのが習慣になっていました。
― そんなある日 ―
「 今までよくガンバったな。キミの正式採用が決まったぞ」
「 ほ、ほんとですか?」
仕事が終わると、若者は急いでにショ―ウィンド向かいました。
自分がツラい仕事に根を上げなかったのは、あの不思議
なマネキンが声をかけてくれたからでした。
若者は、一刻も早く、『正式採用』のことをマネキンに知ら
せたかったのです。
若者の足は次第にはやくなるのでした。
若者は、いつものショーウィンドーの前に立ち尽くしました。
「 アッ!」
いつものショーウィンドーには、あのマネキンはいませんでした。
( きっとあのマネキンは、女神さまだったんだ・・・
失敗して落ち込んでいるボクがやる気を取り戻したので、
困っている別の人を助けるために他所へ移っていったん
だ・・・・・ )
「 女神さま、ありがとう・・・・・ 」
若者はいつまでもショーウィンドーの前に立っていました。
「 どうも、ご苦労様。これは少ないけど謝礼だよ。
2〜3か月後にまた、頼みたいけど、どうかな?」
「 ありがとうございます。
でも、次回のことはちょっと考えさせてくださいね。
ずっと動かないでいるというのは、結構大変なんですよ」
― おしまい ―