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実りの秋、今年も豊作です。
チューッ! チュチューッ! チューッ!
「 わーっ! ね、ねずみだー!」
「 ウワーン! せっかくみのったおコメがー!」
― 数日後 ―
「 おや、めずらしいな。シロへびだ 」
男は弱っていたシロヘビを家に連れて帰りました。
「 食べないなぁ」
「 米粒じゃ無理よ。ヘビは丸呑みっていうから、こうやってお餅にすれば、」
「 オッ! 食べたぞ」
「 よく見るとこのヘビ、頭にオレンジ色のコブがあるわ。
もしかして、神さまのお使いかしら? 」
やがて、元気になったシロヘビは男の後を付いて
行くようになりました。
男が田畑をたがやしている間、シロヘビはトグロを巻いて
じっとしていました。
やがて、また実りの秋がやって来ました。
チューッ! チュチューッ! チューッ!
「 わーっ! ま、また、ねずみだー!」
ところが、ネズミたちはシロヘビを見つけると、なぜか動きを止めました。
そして、ネズミたちは何もせずに帰っていきました。
こんなことが何年も続き、村はだんだん豊かになりました。
ある夜、突然、シロヘビがしゃべりはじめました。
「 長い間、お世話になりました。
実は、私は神さまのお使いをしていたのですが、つい仕事をサボって
しまって、地上に追放されていました。
しかし、ねずみの害から人間を守ったことが評価されてまた、神さまの
ところに戻れることになりました。」
「 お正月にお餅を重ねて田んぼの横に飾れば、ねずみの害を防ぐ
ことができますよ」
そう言って、シロヘビは消えていきました。
さっそく、ふたりはお餅をつきました。
「 なんだか、あのシロヘビさんがトグロを巻いた姿にそっくりだね」
「 シロヘビさんの頭のコブの代わりにダイダイを置いてみよう」
シロヘビが言ったとおり、それ以降も、ネズミの害はなくなりました。
お餅りを重ねて飾る風習は今でも続いていますが、なぜか二段重
ねに変わったということです。
― おしまい ―
※ このお話は、古川愛哲先生の「日本人のしきたり笑事典」に載って
いた『鏡もちはヘビがトグロを巻いた姿』説を参考にしました。